カードローンやクレジットカードを利用したことがある方は、「クレジットカード現金化」というキーワードを一度は聞いたことや見たことがあるのではないでしょうか?
【現金化】というフレーズから、闇金やクレジットカード売買などの、怪しい印象を持つ方は多いかと思います。
また、その言葉を聞いただけでは、どういったサービスなのかイメージしづらいと思います。
一方、「クレジットカード現金化」に興味のある方は、実際に利用した場合のリスクや、そもそも違法なの?といったことが気になるかと思います。
そこで、このページでは、クレジットカードの現金化について、仕組みやリスク、違法性などについて解説したいと思います。
クレジットカードには、『ショッピング枠』と、『キャッシング枠』という2つの枠があります。
ショッピング枠は、商品やサービスを購入する際に利用する機能です。クレジットカードのメイン機能といっても過言ではありません。一方、キャッシング枠は、現金の借入ができる機能のことを指します。
『ショッピング枠』と、『キャッシング枠』には、それぞれに利用できる金額が設定されています。たとえば、クレジットカードの限度額が50万円だった場合、30万円がショッピング枠、20万円がキャッシング枠といった具合に割合が決まっているのが一般的です。
分かりやすくいうと、下記の図の状態となります。
また、キャッシング枠は、ショッピング枠に比べて、限度額が少ないため、キャッシング枠を使いきってしまうと、クレジットカードで現金を借りることができなくなります。
そこで、利用されるようになったのが、ショッピング枠で購入した商品を売却し、現金を入手するクレジットカードの現金化です。「ショッピング枠の現金化」とも呼ばれることがあります。
例えば、クレジットカードで10万円の金券を購入し、業者に8万円で買い取ってもらい、現金を手に入れる行為などもクレジットカード現金化の一例です。
クレジットカードの現金化には、「買取式」と「キャッシュバック式」の2種類の方法があります。
それでは、買取式とキャッシング式の仕組みについて詳しくみていきましょう。
上記でも少し触れましたが、買取式とは、換金性の高い商品をクレジットカードで購入し、買取業者がこれを買い取ることで現金を得る方法です。
購入する商品によって、現金化の手順が変わってきますが、大まかには以下のような流れになります。
この方法は、現金化業者に依頼せずに、自分一人で商品選びから売却までを行います。自分でやる手間はかかりますが、現金化業者に支払う手数料がかからないため、換金率が高いというメリットがあります。
同じような流れで、現金化業者を通した現金化の流れは、以下のようになります。
現金化業者を通した現金化の場合、自分で買い取ってくれる店を探す必要がないため、手間を省くことができます。しかし、現金化業者の手数料が発生するため、換金率が低くなります。
典型的な買取形式のカード現金化は、商品券や新幹線の回数券を金券ショップに持ち込むというものです。ほかにも新機種のパソコンをクレジットカードで購入し、中古品の買取店に持ち込むというものもあります。
しかしパソコンなどは、新しいものでもすぐ市場価格が下がりますので、買ってそのまま持ち込んでも、購入価格の70%ぐらいにしかなりません。おそらく現金化業者を通せばもっと安くなってしまうことは間違いありません。
新幹線の回数券は価格の90%で買い取ってもらえるので、クレジットカード現金化の方法としては、いちばんポピュラーな方法です。しかし、クレジットカード会社もこの方法を把握しているので、クレジットカードで、何度も新幹線の回数券を購入していると、カードが利用停止される可能性があります。
そのため、現在はキャッシュバックによる現金化方法が主流になっています。
キャッシュバック式のカード現金化は、店舗を持たない現金化業者が、自身の運営するオンラインショップから安い商品を高額で購入させ、その商品の特典と称してカード決済金額の6割~7割ぐらいの金額をキャッシュバックさせる方法になります。
例えば、100円のアクセサリーのようなものを50万円でクレジットカードで購入し、30万円をキャッシュバックとして受け取るという流れになります。つまり、キャッシュバックされれば、購入商品は何でも良いわけです。
キャッシュバック式の大まかな流れは、以下のようになります。
キャッシュバック方式は価値のない商品を高額でやり取りし、キャッシュバックという名目で現金を振り込んでもらう仕組みになります。
買取式の場合、購入した商品を買取業者へ買い取ってもらう手間が発生しますが、キャッシュバック式の場合は、来店が不要のため、その作業が発生しません。
キャッシュバック式は、クレジットカードさえあれば現金化出来てしまうので、その手軽さから近年、主流の現金化方式となっています。
ちなみに現金化業者は、クレジットカードの加盟店となっているので、加盟店手数料を負担しなければなりません。
そのため、9割とか8割で現金化すると公表している業者も、その率で換金していると、儲けがほとんどなくなってしまいます。ですから、実際の換金率は6割から7割りぐらいと考えておいたほうが良いでしょう。
クレジットカード現金化に関しては、明確な法律違反とはなっていないのが現状です。
なぜなら、買取式やキャッシュバック式の仕組みを見てもらえばわかりますが、行為自体は、購入した商品がいらなくなったから買い取ってもらったという商品売買の形態を取っているので今の法律では規制できないからです。
ただし、明確な法律違反とはなりませんが、受け取り方によっては、「横領罪」や「詐欺罪」に該当する可能性があります。
クレジットカードを利用して商品を購入した場合、その商品は購入者の手元に渡りますが、実はその所有権は返済が完了するまでクレジットカード会社にあります。
これを「所有権の留保」といって、返済が完了するまでの期間はその商品を売却・譲渡することができないことになっています。
その為、クレジットカード会社への支払いが完済していない間は、カードで購入した商品の所有権はカード会社にあるので、それを第三者に買い取ってもらう行為は、横領行為に該当する可能性があるのです。
本来、クレジットカードの利用は、買物をした際にその代金の決済に使用するものです。そのため、クレジットカードの利用規約でも現金化を目的とする使用が禁止されています。
それにもかかわらず、クレジットカードの本来の機能とは違った、現金化目的で使用することは、カード会社に対する欺罔行為・詐欺行為とみなされます。
しかし、現在に至るまで、クレジットカード現金化利用者が詐欺罪で検挙されたという例はありません。
仮に、詐欺罪で訴えられたとしても、詐欺罪として受理される確率は低いと言われています。
これまで、クレジットカード現金化の利用者が逮捕されたケースはありませんが、現金化業者は、過去何度か逮捕されています。
クレジットカード現金化業者が初めて逮捕されたのは2011年になります。
逮捕のニュースは、日経新聞でも取り上げられました。
クレジットカードのショッピング枠を現金化する方法で事実上のヤミ金融を営んだとして、警視庁生活経済課は5日、東京都台東区の貴金属販売会社「インフィニティ」の元代表で飲食店経営、橋本幸治容疑者(41)=板橋区仲宿=を出資法違反(高金利、脱法行為)の疑いで逮捕した。カードの現金化業者を同法違反で逮捕するのは全国初。
ただし、現金化業者のインフィニティが、罪に問われたのは、貸金業法違反と現金化する際の金利が出資法で定める上限金利を上回っていた出資法違反の疑いがあったからで、現金化の行為そのものを罰したわけではありません。
インフィニティが逮捕された取引内容は、以下のようなものでした。
「1個30~120円のおもちゃのネックレスなどを宅配方式でクレジットカードを使って数千円~百数十万円の高額で購入させた上、カード会社から入金される代金の一部を差し引き、残りの金を客にキャッシュバックする方式で、カードのショッピング枠を現金化していた。」
つまり、キャッシュバック式の現金化を行っていたわけです。ここで逮捕の決めてになったポイントをまとめてみました。
つまり、現金化業者が形式だけの取引を行っているので、実際はお金を貸しているのと同じことと判断されたわけです。つまり、インフィニティは、現金化業者ではなく、金融業者であると認定されたことになります。
金融業者であれば、貸金業法にもとづいて登録をしなければいけませんが、インフィニティは、貸金業の許可を受けていなかったので、貸金業法に違反しているということになります。
また、インフィニティは、利用客4人に対しプラスチック製のネックレスなど300円程度の商品を約420万円で販売し、内350万円をキャッシュバック。差額の70万円程を実質的な利息として受け取ったようですが、これは法定金利の10~20倍に相当するようです。
金融業者は年利20%を超える金利を設定してはいけないと、出資法で定められています。一方、インフィニティは、年利20%の20倍に相当する利息をとっていたことになるので、年利400%でお金を貸していた計算になります。
年利400%というのは、50万円を1年間借りた場合、利息だけで「1,999,835円」になります。カードローンでは、ありえない利息です。ほぼ闇金ですね。
ですから、これが、出資法に違反しているということで逮捕となったわけです。
本来、クレジットカードのショッピング枠は買物をした際にその代金の決済に使用するものです。ですから、換金を目的として利用するのは、契約違反となる行為になります。
そのため、クレジットカードの現金化は、カード会社の会員規約で禁止されています。
各カード会社の会員規約には次のようにあります。
10.会員は、 現金を取得することを目的として商品・権利の購入または役務の提供などにカードのショッピング枠、ショッピング残高枠(第19条第2項に 定めるものをいう。)を利用すること(以下「ショッピング枠現金化」という。)はできません。
引用元:会員規約(個人用)第22条(ショッピングの利用)
F.いわゆるショッピング枠の現金化など換金を目的とした商品もしくは権利の購入または役務提供の受領その他の方法による資金の調達のためにするカードのショッピング機能の利用(以下「利用可能枠の現金化等」といいます。)など、正常なカードの利用でないと当社が判断した場合。
引用元:第13条(退会・会員資格の取消およびカードの使用停止・返却)
⑥第三者による利用、換金を目的とした商品の購入等、カ-ドの利用状態が適当でないとオリコが判断した場合。
引用元:第5章 会員資格の喪失
3. カードは、会員が個人的に消費するための商品等の購入ま たは役務の提供等を受けることの決済に通常利用するもの であって、転売または換金目的で利用することはできませ ん。この他、過去の商品等の購入または役務の提供等に係る 債務の精算にカードを利用することはできません。
引用元:第9条(加盟店でのカードの利用)
ショッピング枠は、あくまで買い物をする為のものであり、どのクレジットカード会社もショッピング枠の現金化・換金は、認めていません。
日本クレジットカード協会のホームページでも、現金化の誘いに注意してくださいと呼びかけています。
クレジットカードのショッピング枠の「現金化」の誘いにご注意ください | 日本クレジット協会
クレジットカードの現金化は、規約違反になるため、現金化の利用が発覚した場合、次のような措置がとられます。
クレジットカードは利用規約を守って使っていく前提で契約が行われています。これに違反したことが発覚した場合には即刻、利用停止処分が下されます。
現金化が発覚して利用停止となった場合には、利用停止を解除してもらうことはできない可能性が高いため、今後一切そのクレジットカードを利用することができなくなります。
現在、使っているクレジットカードが利用停止になると、スマホや公共料金、光熱費などをクレジットカード決済にしているかたは、利用停止後引き落としができなくなるため注意が必要です。
クレジットカード会社が悪質だと判断した場合、利用停止ではなく強制退会させられてしまう可能性があります。強制退会になると金融事故履歴(異動情報)として、信用情報機関に最長5年の間記録が保管されてしまいます。つまりブラックリスト入りするということです。
ブラックリストに載ってしまうと、信用情報に傷がつき、それ以降そのカード会社はもちろん、他社であっても新たなクレジットカードを作りにくくなります。つまり、長期にわたってクレジットカードを使えなくなるということです。
また、強制退会になると、その時点での未納利用額を一括で返済しなければならなくなります。そうなると、現金化に利用したショッピング枠だけでなく、キャッシング枠で利用した金額も全額支払わなければならなくなります。
クレジットカードの現金化業者のホームページを見ると、【換金率最大96%】【業界No1の還元率98.8%】といったキャッチコピーが目につきます。
この「還元率」「還金率」とは、現金化の際に、商品をいくらで買い取ってもらえるか?の割合になります。
還元率が90%なら、ショッピング枠で10万円の商品を買い、9万円で商品を買い取ってもらい現金を受け取ることができます。差額の1万円(10%)は手数料です。
クレジットカードの支払いは、2か月後になるので、翌々月にはカード会社から10万円の請求が来ます。
このやり取りは、形式上は10万円の商品を購入し9万円で売ったことになります。しかし、実質は9万円のお金を借りて、2か月後に1万円の利息と一緒に返済しているのと同じことになります。
仮に、現金化にかかる手数料1万円を利息として考えてみた場合、金利に換算するとどれくらいになるのでしょうか?またカードローンの金利と比較すると、どれくらいの差になるのかを見ていきたいと思います。
9万円のお金を借りて、1万円の利息が発生した場合、1万円÷9万円=11.11と計算して、金利は11%と思う方もいらしゃるかもしれません。
しかし、これは間違った計算方法になります。
金利を計算する際、かならず「年率」で表示するように義務付けられています。これは、表示を統一することで、金利を比較しやすくするためです。
「年率」というのは、「1年間で何%の利息がかかるか」を示したものです。年率のことを年利と言う場合もありますが、基本的には同じ意味です。
利息の計算方法というと、難しい計算式をイメージしてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、実はとてもシンプルです。
式にすると下記になります。
先ほど、9万円のお金を借りて、2か月後に1万円の利息を支払うという話をしました。これを上記の式に当てはめると金利を求めることができますが、ポイントになるのが借入日数(借入期間)です。
計算式では、「〇日 ÷ 365日」と記載されています。先ほどもお伝えしましたが、金利は、「年率」で計算されます。
「年率」というのは、「1年間で何%の利息がかかるか」を示したものです。今回の例では、2か月(60日)の利用期間なので、利用日数に応じた日割り計算にする必要があります。
そのため、計算式の利用日数は「60日 ÷ 365日」になります。これを踏まえて計算式を作ると下記のようになります。
計算の結果、9万円のお金を借りて、2か月後に1万円の利息を支払う場合、金利は「67.5%」になります。
金利が高いと割れている消費者金融系カードローンの金利でも18%~20%なので、67.5%の金利は、闇金レベルということわかります。
ちなみに、今回の計算は現金化の還元率が90%の場合を想定して金利の計算をしました。しかし、実際の現金化の換金率は、平均すると75%が相場といわれています。これを踏まえて再度、金利を計算してみました。
還元率75%の現金化業者を利用して、手数料を1万円支払った場合、金利は「81.1%」になります。
これが現金化業者を利用して、お金を引き出した場合のおおまかな金利となります。
クレジットカード現金化の相談が、近年、国民生活センターで増加しています。
少し古いデーターになりますが、国民生活センターに寄せられた相談件数は、2005年度から2009年度の約5年間で696件あります。2009年度に受け付けた相談件数は2010年3月26日現在で207件の相談が寄せられており、前年度の同時期と比較して約1.7倍増加しているそうです。
国民生活センターでは、2010年4月より消費者に「クレジットカード現金化によるトラブルに注意!」と勧告し問題点やどのような悪徳商法なのかを解説しています。
【「クレジットカード現金化」をめぐるトラブルに注意!-利用者自身も思わぬ大きなトラブルに巻き込まれるおそれが-国民生活センター】
すでにお伝えしましたが、クレジットカード現金化を利用することは、クレジットカード契約に違反する行為であり、また、消費者自身も思わぬトラブルに巻き込まれるおそれがあります。
ここでは、国民生活センターに寄せられた主な相談事例を見てみたいと思います。
現金が必要になり、「即日融資、担保・保証人不要、低収入でも融資する」との広告を見て店へ行った。
業者に「クレジットカードで買い物をすれば買い取る」と言われ、業者と一緒にカー用品店へ行き、クレジットカードのショッピング枠の限度額 70 万円分でカーナビゲーションを 6 台購入した。
しかし、それらを業者には 40 万円でしか買い取ってもらえず、さらに限度額分の買い物をしたのでカードが使えなくなり困っている。買い取りに関する書面はもらっていない。
「ショッピング枠で現金化」と看板のある宝石店に行った。店頭には宝石の陳列はなく、現金化の話をすると、クレジットカードを出すよう求められ、クレジットカードで 10 万円分の 決済をしたようだ。控えと 7 万 5000 円を渡され、カウンターの下から腕輪を出された。「これを 7 万 5000 円で買い取った」と言われた。不審に思うので解約したい。
クレジットカードを使い、「インターネットのショッピングモールで 10 万円のパワーストーンブレスレットを購入すれば、7 万 5000 円のキャッシュバックをする」という説明を受け、ブレスレットも手に入り、さらにキャッシュバックも受けられるのでお得だと思い契約をした。
商品と 7 万 5000 円を受領したが、この商品に値打ちがないと思われるため、商品を返品したい。現在任意整理中であり、クレジットカードの支払いをしなければならないが、現金は残り2 万円しかなく返済出来ない。
携帯電話のサイトで「クレジットカード現金化」という画面を見て申し込んだ。
業者に 4万円欲しいと伝えると、5 万 4000 円のカード決済が必要だといわれ、カード番号やカードの有効期限等を教えた。
その後、カードと身分証明書を写真メールで送れといわれ、怪しいと思った。条件が違うのでキャンセルをしたいと伝えたら、罵倒されたので、こちらから電話を切った。翌日カード会社に確認をしたら、カード決済された形跡がある。